2013年11月15日金曜日

これからの営業は「売り込み」ではなく、「お役立ち」

「営業」というと、モノ・サービスを売る仕事である。

営業担当者自身でも「今月も『売り込んで』、ノルマあげなけきゃ」と日々、走り回っている
人は多いと思う。

しかし、これからの営業担当者のマインド・心の持ちようとして、「売り込み」という
発想は捨てたほうがいいのではないかと思う。
「売り込み」というと、自社の売上や利益をあげるために、
「余分なものを買わせる」「ちょっとでも多く買ってもらう」といった、どちらかというと
顧客・取引先の「不利益」につながるネガティブなイメージがある。

実際、「売り込もう」と思って営業活動をしている人は結果として、売上や利益を
あげられないことが多い。
一つには、顧客・取引先から「売込み光線」を見透かされるからだ。
売込み姿勢が目立つと、「こいつ、また、自分のところの都合で商談に来たな」と思われて、
そもそも、きちんとした信頼関係を築くことが難しい。
もう一つは、実際に顧客・取引先がビジネスとしての成果を上げられないからでもある。
消費財メーカーの小売り店への営業を考えるとわかりやすいが、「売り込もう」と思っている
担当者は、商品の導入が決まり、自社の売上が立った時点で、「よし!売込み完了!」と
思っているので、その先にあまり気を配らない。入荷した商品が回転していなかったとしても、
置き場所を変えるなり、POPなどの販促で、なんとか小売店で消費者に手に取ってもらような
施策を考える、ということがおろそかになる。

逆に、営業活動で成果を上げている人は、
「いかに自社の商品・サービスを手段(ツール)として、顧客・取引先のビジネスに役立つか」
という「お役立ち」の発想で仕事をしている。
焦点は、顧客・取引先のビジネス成果である。
これを「本気」で考えられるかどうか、が極めて重要だ。

上記の消費財メーカーの小売店への営業でいえば、自社の商品の売上の限らず、
担当する小売り店の棚(カテゴリー)全体の売上や利益を上げることを「真剣に」考えている。
「ちょっとこの棚の棚割り考えてみてよ」と顧客・得意先に言われたときに、
(こういってもらえるまでが、実際、大変なのだが・・・)
いかにして、その棚の成果を最大にするかを考え、提案する。
自社の都合を考えれば、自社商品で埋め尽くせばいい。
が、よっぽどのメーカーでない限り、自社の「3番手、4番手」の商品よりも、
他社の売れ筋を入れたほうが、棚としての成果は高まる。
こういうときに、ギリギリまで自社の商品も入れつつ、他社の売れ筋も入れた提案ができるか
どうかが、継続的に営業で成果あげられるかどうかの分かれ目だ。

昔ならともかく、今は「成果・結果はシビアに数字で出る」ということを忘れてはならない。
そう、おそらく、POSも普及していないような高度成長期は「売込んで」おいても、モノは売れたし、
その結果をギリギリ問われることもなかったのだろう。
「カテゴリー単位の売上・回転」なんてものは雰囲気でしかわからなかったのだから。
今は、売っているものがなにであれ、「導入後の効果」が厳しく問われるのが当たり前なのである。

顧客・得意先のビジネス成果を一番に考える、といっても、なんでもかんでも
顧客の要求通りにするとか、自社の利益を犠牲にせよ、といっているのではない。
極端な話、値引きして売れば、顧客の利益になる。
しかし、あくまでこれは短期の話だ。「特別条件」みたいな話は一時的には可能でも
長くは続かない。
だいいち、値下げして売上を上げるなんてことは、バカでもできる。
いかに、自社の利益を削らずに、顧客・得意先の成果を最大化できるかに
「知恵」を使う必要があるのだ。

なお、これは姿勢の問題なので、「売り込み」を「提案」という言葉に変えても、
中身が一方的な自社都合でのPRになっていたら同じだ。
「当社の新商品なので、ご提案します」
「ただいま、キャンペーン中なので、ご提案します」
というのは、典型的な「売込み」である。

そうではなく、いかに自社の商品を使って、顧客・得意先のビジネスに「お役立ち」ができるか。
いかにしてお客様のビジネス成果を大きくできるか、その発想が大事だ。
これは顧客・得意先の担当者と目線・ゴールをそろえる、ということでもある。
ゴールが一つになり、ベクトルがそろえば、商談の場でともに戦う「同志」として、
議論できるようになる。
「売込みばっかりで面倒くさいヤツ」と思われるか、
「何かうちにトクになる話を持ってきてくれる、一緒に話ができるパートナー」
と思われるか、それは、姿勢次第なのである。
成果が出れば、得意先に感謝もされる。
目の前の人に喜ばれたり、感謝されれば、仕事は断然、楽しくなるものだ。

2013年11月13日水曜日

コンビニコーヒー戦争 ローソンがセブンイレブンに勝てない本当の理由

コンビニでいれ立てのコーヒーを飲むのが当たり前になって、
最近、そのたびに「うーん」と考えさせられるのがローソンのコーヒーだ。

セブンイレブンで挽き立てが100円となった今、180円(ポンタで割引がついても150円)は
どう考えても割高である。
僕の行く店では、50代と思しきパートのおばちゃんが、どう見ても似合っていない
カフェ風エプロン姿で手渡ししてくれる。
しかし、おばちゃんはレジ係でもあるので、手を消毒し、コーヒーを入れて、ふたを閉める間は
レジで行列をしている人たちは「ちょっとお待ちください」とお預けを食う。さらに困ったことに、
コーヒーの受け取り口は店の出口に近く、一番奥側のレジでコーヒーを注文しようものなら、
その距離約5メートルである。作業と移動の往復にして10秒。
普段はどうということのない10秒だが、オフィス街の昼下がり、13時から再度始業開始ですよ、
というコンビニでは永遠のような10秒間だ。

「セブンイレブンみたいに、セルフにしたらいいのに」
と、僕に限らず、ローソンでコーヒーを買った人の90%が思っているに違いない。
中には、ラッキーにも、コンビニのバイトのお姉さんが超かわいくて、
「あのお姉さんから手渡ししてもらえるのが、一日の最高の癒し」みたいな男子も
10%くらいはいるかもしれないが・・・。

導入当初はスタバのようなコーヒーチェーンを想定して、「手渡し」にしたのだろう。
衛生面の気遣いもあったかもしれない。
また、「レジが行列を作る」みたいな場面の少ない地方のコンビニは手渡しでも
問題ないかもしれない。
が、コンビニでコップに入ったコーヒーを飲むのは都市部で働く人たちで、
それも出勤前と昼休み休憩がピークに決まっている。その時間帯はたいてい、レジは行列だ。

その中で、あの「コーヒー手渡し」は、どう考えても、機会損失のもとだ。
「あ、ローソンはレジこんでるから、他にしよ」となっても、何ら不思議はない。

コーヒーの件に限らず、どうも最近のローソンは、賢い本部スタッフが戦略考えました」色
強い気がしてならない。ナチュラルローソンにしても、「街のヘルスステーション宣言」にしても、だ。
確かに、戦略としては一見正しそうに見える。王者であるセブンイレブンと違う競争ポジションで
戦う、というのは「教科書的な戦略論」でいうと、すごく王道だし、納得感もある。
(「ストーリーとしての競争戦略」で有名な楠木先生風に言うと、SP(ストラテジックポジショニング)  的競争戦略の典型)

が、しかし、なんだか頭でっかちなのである。
その戦略を描いた人たちは、この現場、売り場の、レジ内のドタバタを見たのか?と。
「あー、もう13時には戻らないといけないのにー」と、スイーツ片手にイライラしている
OLさんたちの表情を見たのか、と。

先日、新聞では「コーヒーは粗利率も高いので、加盟店ももっと積極的に売ってほしい」
という新浪CEOの談話が載っていて、
「いやー、売りたくても売れないんじゃないの、オペレーション大変だし」と、思わず
突っ込みを入れたくなった。
少なくともオフィス街平日昼のローソンレジで「ご一緒にコーヒーもいかがですか?」という
余裕なんてどこにもない。
その前に、機械も必要に応じて入れ替えて、セルフ化だろ、と思う。

そんなことを考えていたら、今日の日経MJにセブンイレブンのコーヒーの記事が載っていた。
後発ということもあり、味の素AGFと富士電機の協力を得て、2年の開発期間を経て、
満を持して投入したという。
確かに、目の前でコーヒーをがりがりと挽くシズル感、取り出し口のカバー(衛生、安全、香りが広がる効果)、出来上がった際のピーピー音(サンクスにはこれがない)、出来上がりのスピード、
メンテナンスの早さなど、セブンのものは完成度が高い。
そして100円という価格。
それはもう、圧倒的にセブンに軍配があがる。
ローソンの平均日販60杯に対し、セブンは90杯というのもうなずける。

セブンの攻勢に対して、ローソン他、各社も対抗策を出すという。
ローソンは期間限定で高級希少種を使ったコーヒーを出すとともに、
サービスをより充実させるために、「接客やコーヒーの専門知識を問う社内の資格制度の
資格保有者を現在の4倍に当たる2,000人に増やす」らしい。

ん??ちょっと、それ、努力の方向、間違ってませんかね?!
高級希少種はともかく、
「サービスを充実」って。コンビニのコーヒー手渡しに何の専門知識とサービスが必要だと
いうのか・・・。
コーヒーの専門知識を問うくらいだったら、手渡しできるのは「かわいい子か、イケメンに限る」とかの方が効果高そう・・・。
そして、コンビニにおける最上のサービスとは「混雑しているレジでストレスを感じさせないこと」ではないのか。

同じ今日のMJによると、セブンの鈴木会長は常々、社内に
「他社を見るな、お客の変化だけ見ろ」と言っているという。
おそらく、セブンにとっては「お客の変化」の大事な要素の一つとして、
「現場」「売り場」が入っているに違いない。
会議室で、ライバルをきっちり分析し、きれいなポジショニングマップを書いていそうな
(完全に想像ですけど)、ローソンとは、実に対照的だと思いませんか。

2013年11月11日月曜日

マーケティングインフラとしてのTポイント

Tポイントが購買データの食品や日用品メーカーへの提供を開始する。
多数の加盟店から集めた購買データから、特定の商品の購入者のプロフィールや
他の商品の購入状況、思考などを分析して提供するという。

「ビッグデータでマーケティングがかわる」系の話は大半が幻想だと思うが、
これはやり方次第で、使える「インフラ」になりそうだ。
特に有効なのは、消費者調査に大きな費用をかけられない中堅・中小メーカーだ。

消費財メーカーといっても、アサヒ、キリン、サントリー、キユーピー、カゴメ、日清食品、グリコや、資生堂、花王、ライオンといった1,000億円を超えるような大手メーカーばかりではない。
ギョーザ専業メーカー、豆菓子専門メーカー、傘メーカー、ホームセンターに雑貨や鍋を作っている
会社などなど、地方に行くと、消費財を作って、スーパーやホームセンター、ドラッグ、コンビニなどにおさめている数億から数十億規模の会社がかなりある。

そういう会社に勤めたことがある人ならわかると思うが、実はこういうところでは、
「実際のところ、自社の商品を買っているのはどういう人か」ということが、
びっくりするくらい見えていない。

上にあげた大手企業の中で、「ちゃんとマーケティングをやっている会社」なら、
ネット調査などを使って、おおよその商品ごとの顧客像はつかんでいる。
「ターゲット設定」はマーケティングの根幹であり、実際に想定通りの顧客層に受け入れられたか
どうかを確認しておけば、適切な「次の一手」が打てるからだ。

しかし、中堅・中小企業はそうはいかない。数百万円の調査予算なんてどこにもないし、
そもそも、ネットモニターから「自社の顧客」を探すだけで一苦労である。有名ブランド商品
でなければ相当出現率が低いし、「〇〇のこんにゃく」みたいな一般名称に近い商品だと、
自社商品の顧客を識別することすら難しい。
「知ることが難しい」と、次第に、そのことへの関心も薄れていく。
「最終の顧客」という、メーカーにとって最も重要なものであっても、だ。

かわりに重視されるのが、スーパーのバイヤーなど、流通の声である。
「A社で売れている、あれよりちょっと安いの持ってきて」
「B社と同じ価格で、もうちょっと量が多いやつ」
といった目の前のバイヤーの声に従って、実際の商品開発が進めれているのが、
中堅・中小の消費財製造業の実態だ。
そこに慣れきってしまうと、「消費者のインサイト」なんてことへの関心は遠のき、
目の前のバイヤーの意見の振り回されることになる。そこに主導権の持ちようはない。
商品も、誰向けなのかわからない、「万人受け」で、ありきたりなものになりがちだ。
行き着くところは価格競争だ。

中堅・中小企業と書いたが、大手メーカーの中でも売り上げ規模の小さい商品は
大なり小なり似たような状況だ。
一品番で数億円を超えない規模の商品に、潤沢な調査予算がつくことは、まずない。

Tポイントで、商品の知名度、規模を問わず、購入者のデータが得られるようになることは
この状況に風穴を開けることになるかもしれない。
「〇〇社のギョーザ 20個入り」をどんな人が、いつ、どんな店で購入したかが、
わかるようになるからだ。
「今の顧客がはっきり」というのは、商品開発に指針と確信を与える。
商品開発の方向は、大きく、今の顧客にもっと買ってもらえるものか、
今とれていない顧客にリーチするものか、それさえ決めればいいからである。
かつ、「今の顧客」と「とれていない顧客」がどういう人かがわかっていれば、
かなり商品企画開発の方向性は絞り込まれることになる。
「社内でなんとなく、こんなのが私はほしいと思いました」とか「バイヤーからこういうのを使ってくれと言われました」というより、
「現在の主要顧客の30代男性がさらに満腹感を感じもらえるような商品」とか
「今、取れていない高齢者2人暮らし世代向けの商品」といった方が、
より戦略的な商品開発が可能となるはずだ。

今のところ、Tポイントデータの利用料金は100万円以上とのことだが、
数十万まで下がってくれば、使える企業はかなり増えるだろう。

もう一つ、マーケティングのインフラという意味では、最近リリースされた
マクロミルの「Questant」も注目だ。これはASP式のセルフアンケートサービスで
今のところ10問100サンプルまでなら無料で利用できる。
有料化も予定されているようだが、年間29,800円と個人事業主でも十分使えるレベルだ。
モニター属性に厳密さをもとめず、「ちょっといろんな人の意見を聞きたい」というシーン
で使えそうなツールだと思う。当然、メーカーの商品開発にも使えるだろう。

郵送調査や対面調査しかなかった時代から、ネット調査が普及して、
「消費者を知る」「顧客を知る」ことは、かなり容易になった。
マーケティングのインフラにおける「民主化」だ。
現在、技術の進化でより一層の民主化が起きつつある。

道具はそろいつつある。あとは、いかにこれを「使いこなすか」だ。
それには、顧客のことを知りたい、という企業としての意識・風土が必要である。
目の前のバイヤーが顧客ではない。
自社の商品を購入し、使ってくれるお客様こそが、自社の顧客である。
中堅・中小企業にとっては、まずは、その発想転換が必要かもしれない。

2013年10月29日火曜日

バルミューダのRain~ヤカンで給水するという発想~

自然な風に近い扇風機で成熟した家電業界に一石を投じた
家電ベンチャー、バルミューダから、ヒーターと加湿器が発売された。

加湿器の名はRain。

甕のような形状が特徴的だが、なんといってもユニークなのは、給水タンクがなく、
上からヤカンなどで水を注ぐ、という給水方法である。

これをみたときに、筆者は「わかる!!」と思ってしまった。
空気清浄機や加湿器のタンクに水を入れて運ぼうとして、
ボトボトって水がしたたり落ちた経験、皆さんありません?
だいたい、普通の空気清浄機とかって、タンクのサイズからして水を注ぎにくい。
あんな長細いの、普通のキッチンのシンクには斜めにしないと収まらないのだ。
あと、向きを間違えたり、キャップの締め方がゆるいとボトボトっていきますよね・・・。

そしてこのRain。(ま、これは空気清浄機じゃなく、加湿器だが)
「水を持ち運ぶのはタンクじゃなく、ヤカンの方が簡単・便利に決まっている」
とバルミューダ社の寺尾社長。おっしゃるとおりである。

この社長の寺尾さんの経歴も、ユニークである。
元はミュージシャンだったが、うまくいかず、その後、モノ作りの世界に
飛び込み、独学で設計、製造を学んだという。

そのキャリアからか、この「ヤカン」発想にしても、
「家電業界にどっぷりつかっていないからのこその商品開発」だな、と思う。
アマダナなどの「デザイン家電」というくくりで語れない、チャレンジ精神というか、斬新さを感じる。
アマダナはおしゃれだが、社長が東芝出身であることからしても、どこか「家電業界」
のにおいがするからだ。

理想の扇風機って、自然の風だよね。
水を持ち運ぶなら、ヤカンが一番だよね。

凝り固まった枠の中での、チビチビとした、機能、性能競争の「家電業界発想」とは
一線を画したものがそこにはある。
筆者がいいな、と思うのは、そこに消費者の生活場面がリアルに想起できる点だ。

今回発売された加湿器とヒーターには、UNIAUTOというスマホアプリに
対応している。このアプリは外から、ヒーターや加湿器のオン、オフができる、というもの。

家に帰って、「あーーー、さむさむっ」とエアコンやヒーターをつけるけど、
なかなか暖まらなくって・・・という場面、ありますよね。

遠隔制御の機能自体は、従来のエアコンでもついているものもあった。
だが、このUNIAUTOは一歩先も見据えていて、ネットにつながったスマホだからこそ、
将来的には、その製品が置いてある場所や天気予報情報をもとに「必要な時に、必要な分だけ
動いてくれる」ようになることも構想している、という。

加湿器Rain46,800円。
扇風機グリーンファンほどのヒットになるかどうかはこれからだが、
バルミューダのモノづくりにはこれからも注目していきたい。

2013年10月20日日曜日

30代以下の営業パーソン

筆者は現在、30代後半だが、
いま、営業の一線で働いている人のうち、20代、30代の「若手」がかなりの比率を占めるはずだ。
バブル以降に青春を過ごした世代である。
「営業」という職種で考えると、この世代は不幸であり、ラッキーでもある。
不幸といったのは、経済全体が停滞しており、モノが売れない、という時代であることが一つ。
もう一つは、実は社内に「営業としての良い見本」が少ない、という点である。
同じ会社で「営業」といっても、上司や先輩が営業の一線で働いてた時とはかなり前提が違う。
営業の現場の方々と接していると、世代・年代による違いを感じることが多い。
(しかも、だいたい、どこの会社も同じような構造になっている)

50代以上のベテランには、昔ながらの体力、人間関係の
「勘と経験と根性」(3K)タイプが圧倒的に多い。
経済が右肩上がりに成長していた時代は、ある種、体力や人間関係の世界であった。
(たぶん)
この世代の人は自社商品についてよく知っているし、交渉力や押しも強い。
経済が伸びていたので、問屋と小売り、問屋とメーカーの間で、
その果実をいかにわけあうかが重要だったからである。
しかし、「得意先に対する提案を考えてください」というと、思考がストップする。
(そして、パソコンも苦手である。)

お兄さん、お姉さん世代の40代は、できる人はできるのだが、
失礼ながら、「中途半端で残念な人」が少なくない。
バブル崩壊以降に社会人になったが、先輩たちの多くは「イケイケどんどん」世代で、
「モノが売れない時代」への対応を誰も教えてくれなかった(推測)。
一方で、インターネットも十分には普及しておらず、
顧客を訪問し、カタログやチラシを持って商品・サービスを紹介する
ことにそれなりに意味があった

そこで、割とコツコツと得意先を訪問して、説明や先方からのオーダーはある程度
ソツなく対応できるが、こちらから「仕掛ける」ようなことは苦手なタイプが多いように思う。
そもそも環境的にモノが売れない時代でキャリアをスタートしてるいるので、
ベテランほど人間力に期待をしてもいない。

だから、今の20代や30代にとって、上司や先輩が、
十分な「見本」になりえるかというと、難しいケースが多いのである。
低成長、モノが売れない、デフレ、そして情報の流通コストが劇的に安い、
そういう環境は我々の上司や先輩の世代がかつて経験したことが
ないものなのである。


しかし、それだけに「営業」という仕事の面白味もかつてないほど、大きくなっている、
と言えると思う。
それが「ラッキー」といった意味である。

自分次第で、「普通にいったら、伸びない売上」が伸びたりする。
「商品を紹介する」だけでは売れないので、「企画」や「提案」が大事になっている。
その分の、個人の努力・工夫の余地も大きい。クリエイティビティが発揮できる。

PBの提案やビジネススキーム自体の提案など、
「商品を紹介する」以上に、社内を巻き込んで、「プロデューサー」や
「プロジェクトリーダー」的な仕事もできたりする。

条件の交渉ではなく、
「いかに、パートナーとして共同でビジネス成果を出せるか」
という得意先との前向きな議論に時間がさける。
顧客側も、「売れない(伸びない)のが普通」なので、
売れる企画を提案され、それが成果に結びつくと本気で感謝してくれる。

(売れた時代は誰のおかげで売れているのか、よくわからない)

要は、そういう
「普通にしていたら、全然売れないけど、やりようによってはちゃんと売れる」
という環境を楽しめるか
どうかだと思う。
同じ仕事をやるなら、楽しまなければ損である。

2013年10月9日水曜日

営業とはクリエイティブな仕事である(2)

情報の流通コストが劇的に下がり、
ビジネス成果を創造するクリエイティビティこそが営業に求められる
ものになっている。

余談だが、この話の文脈で、私が職業としての先行きを心配する
業種の一つが製薬業界のMRである。
その名も「医薬情報担当者であり、医師を訪問して、
医薬品に品質、有効性、安全性に関する情報を提供したり、
収集したりする仕事
である、とされる。
要するに、ドクターに対して、自社の薬の採用をあの手この手で働きかける仕事なわけだが、
表向きの「情報提供」という部分に関して言えば、
情報の流通コストの劇的な低下のあおりをモロに受けそうである。
「情報の伝達」という手段だけに注目すれば、「人」ほど
高コストのチャネルはないからだ


医師向けのポータルを運営する超高収益企業エムスリーの決算資料(2012年度)に、
これの裏付けとなる面白いデータが載っていた。
製薬業界側がかけるマーケティングコストのうち、
MRにかかわるものは、実に1兆4,000億円で92%を占める。
国内6万人と言われ、その多くが高給取りであるので、納得の数字である。
一方、医師側が情報収集をどのような手段で行っているかを
「時間」でみたときに、上位が学会・研究会・雑誌などで44%、
ついで、インターネット39%、MRからは何とわずかに17%に過ぎないらしい。
詳しくはこちらの9ページ
http://corporate.m3.com/ir/library/presentation/pdf/20130425_03.pdf

あくまで「時間」なので、その少ない面談時間の「濃さ」はあるだろうが、
MRという仕組み自体が、効率的でないのは誰の目にも明らかである。
今のところ、
「エムスリーのMR君を活用する代わりにMR人財を大量整理」
みたいな製薬会社はないようだが・・・。
そもそも利益率が高い製薬会社だからこそ、
これだけの人員を抱えていられる、ということなのだろう。
10年後に「データサイエンティスト」なる職業が普及しているかどうかも
あやしいが、MRという職業が今と同じくらいの規模で存在しているかどうかも
謎であるかもしれない。

営業とはクリエイティブな仕事である(1)

営業ってクリエイティブな仕事だと思う

高度成長期やバブル時代がどうだったかはわからないが、少なくとも
30代後半の筆者が知りうる限りはそうである。

営業は言うまでもなく、モノ(およびサービス)を売る仕事だ。
※ここでいう「営業」は、産業財であれ、消費財であれ、基本的に企業や法人を対象とする
 法人営業をイメージしている。「個人向けの販売」は、これとは少し様相が異なるからである。
 これはまた別の機会に書いてみたい
しかし、かつてはモノ・サービスを売ることに付随して、色々とやることがあった。
ざっと考えただけども、
1)商品の配送(商品が物理的なモノの場合)
2)注文の受付
3)集金
4)商品情報の提供…カタログの配布や新商品情報の提供など
といったものだ。

今日、これらの付随業務の多くは、「営業」以外のものにより置き換えられている。
1)の配送も物流網の発達で、販売と配送を分けている(配販分離)企業は多い。
2)も単に注文を受け付けるだけであればWebなどの電子的手段が普及している
3)の集金を営業が担っていることも少ないだろう
そして、もっともインパクトが大きいのは4)である。
1990年代後半以降、インターネットの普及に伴って、情報の流通コストは劇的に下がった。
別に営業マンにチラシやカタログを持ってきてもらわなくても、単純な情報なら
Webやメールで入手が可能になった。

それにもかかわらず、相変わらず、一方通行に自社の商品・サービス情報を届けることが
営業の大きな仕事だと勘違いしている人が多い気がしてならない。
最悪なのは、「自社で新発売だから」という理由で顧客のところを訪れ、
流暢な、つまり通り一遍で他でも説明しなれたカタログ情報をとうとうと語るような営業担当者だ。
こんな担当だったら、仮にカバンを白いハンカチの上に置こうが、毎回2分のアポなし
訪問の回数を重ねられようが、筆者は買う気になれない。
人ほどコストの高い情報伝達チャネルはない。情報を右から左に流すだけなら、
メールやWebで十分なのである。

今の時代において、営業がやるべきことは、いわゆる「提案」や「企画」である。
顧客のビジネス成果に貢献する企画を練り、その実践をいかにサポートできるか、
営業の役割はそこに尽きる。

例えば、今はどこでも大手コンビニで挽きたてのコーヒーが飲める。
コンビニからのオーダーかもしれないが、仕掛けたのが珈琲やマシンの営業だったとしたら、
ものすごい企画である。周辺のデザート等も含めて、これまでにない新たな売上を作り出して
いるからだ。
ドラッグストアでは、いつの間にか、医薬品、日用品、化粧品に加え、食品やつけまつ毛
のような化粧雑貨など、実に多くの商品が並んでいる。これも卸や各種メーカーの営業が
ドラッグの新たな品揃えとして、提案を行った結果かもしれない。
売上をオンするだけではない。ITの各種システムで、コストダウンを実現することもそうだし、
LEDのような省エネ設備の導入も一つの企画である。

特に価値が大きいのは、
「その営業担当者がいなかったら、存在しなかったであろう成果を
顧客と自社にもたらすこと」だ。

現代において、営業とはクリエイティブな仕事である。
逆に言えば、クリエイティブでない営業担当者は要らない。営業は、基本的に正社員で、
会社から見てもそれなりの給料を払っていることがほとんどだからである。
人という高いコストを払っているからには、他で代替できない付加価値の高い
仕事をしなければ、いずれ社内に居場所はなくなってしまうだろう。