2013年11月29日金曜日

提案営業に必要なスキル ~セレクト力とアジャスト力~

営業はクリエイティブな仕事だ。

「自分がいなかったら、存在しなかったであろう成果を顧客と自社にもたらす・作り出す」
のが営業の役割だからである。

「クリエイティブ」だといっても、「クリエイター」に求められる素養がいるとか、
POPのコピーのセンスが必要だとか(それはそれであるに越したことはないが)、
アイデアマンじゃないといけないとか、そういうことを言っているのではない。
(「クリエイター」と称したり、広告を作る人の中で、本当の意味で「クリエイティブ」な人は
 一握りな気がするが・・・)

いわゆる「提案営業」の仕事は「0から1の事例づくり」よりも、
「成功事例の横展開」の方が圧倒的に多いからだ。

例えば食品メーカーの営業がレストランに新しいメニューを提案するとしよう。
全く新しいメニューであれ、日本で知られていないどこかの国の料理であれ、
それを採用しているレストランがない限り、そのメニューが売れるか、売れないかは
誰にもわからない。
最近、回転ずしのくら寿司では、コンビニのような挽き立て珈琲を提供し始めたが、
これも回転ずしチェーンでは初めての試みだ。実際にどのくらいの成果が出るかは
いくら入念にリサーチをしたとしても、「やってみないとわからない」世界である。

営業活動で得意先に提案するとき、その提案が得意先にとって斬新であればあるほど、
それは少なからず、「実験」という色彩が強くなる。
得意先に対しても、「成果が出るかどうかは、やってみないとわからない部分はありますが、
他社に先駆けてやってみませんか」と了承を得なければすすめられない。
(やってこともないのに、「確実に成果が出ます」というのは嘘をいうようなもの)
その分、条件面で優遇したり、まずは「1店から実験」みたいなことで進めるわけだ。

新しい市場を作ったり、新しい用途を広げていくには、こうした「実験」が欠かせない。
しかし、「実験だけ」では、手間と苦労がかかるわりに「目先の数字」には結び付きにくい。
「実験」はある種の「弾込め」である。提案できる武器を作り、それをもとに「横展開」「水平展開」
して数字に結びついていく。

提案のベースとなる武器=事例は何も自分の営業活動だけから作り出す必要はない。
周りの同僚や、上司や、ほかの営業所の営業パーソンの事例など、社内中から
引っ張ってくるべきだ。

問題は、数ある事例の中から、自分の担当する特定の得意先に、「いま」、「最適な」
事例をチョイスできるかである。事例の「セレクト力」だ。
「最適な」というのは、得意先の方針にゃ戦略、課題と合致し、その提案が成果に結びつくか
どうか、ということだ。
ある得意先では成果が出た提案でも、ほかの得意先にはマッチしない、あるいは
やっても今一つ成果が出ない、ということは十分ありえる。
例えば、全国的に高齢の単身者や夫婦二人暮らしが増えているということで、一人や2人に
あった食べきりサイズの惣菜を都市部の食品スーパーに提案し、採用され、実績が出た事例が
あったとする。同じ提案を郊外ロードサイドのスーパーに持って行ったらどうだろう。
「それって、うち向きじゃないよね」と提案自体をはねられるかもしれないし、
単品で「少人数向け」を訴求したところでインパクトは弱く、売り上げ増にはつながらないかも
しれない。
「この事例なら、この得意先A社でも成果につながるだろう」という目利き力が要るのだ。

もう一つ留意しないといけないのは、「横展開」「水平展開」というのは、
「他社で成功した事例を、そっくりそのまま、その得意先に紹介すること」ではない、ということだ。
きっちり成果を出すには、その得意先に適切な事例をセレクトしたうえで、
さらに得意先にあわせて、最適な形にアレンジする能力が問われる。
例えば、「イタリアンフェア」のようなエンド陳列を食品スーパーに提案するとしても、
そのお店の客層やほかの品ぞろえに合わせて、少し高めのオリーブオイルも入れるとか、
アンチョビのような周辺商材を充実化させるといった、細かな「調整」が必要になる。
すなわち、「アジャスト力」である

では、セレクト力とアジャスト力を磨くにはどうすればよいか。
得意先にとって最適な事例を、最適な形にアジャストして提案する。
そこで大事なことは、「何が最適か」は得意先ごとに異なるということだ。
個々の得意先にとっての最適を考えるには、「得意先のことをどれだけ深く知ることができるか」
ということにかかっている。

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